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「社長ブログ」を綴り続けて生まれた、渾身の一冊

投稿日時:2009/03/20(金) 23:55rss

お蔭様にて経営者会報3月号に掲載されました。
以下、編集部の許諾を得て転載させていただきます。

昨年の3月20日、私は人生初の単行本、
『儲けとツキを呼ぶ「ゴミゼロ化」工場の秘密』を上梓しました。

 副題に「たかが掃除で奇跡のV字回復!」とある通り、整理・整頓・清掃の
3S活動に全社挙げて取り組み、業績が向上していった過程とその間の私の思い
を綴ったものです。ブログで日々、情報発信を続けるうちに出版社の方の目に留
まり、お声を掛けていただいたのがきっかけでした。

 それ以前から新聞等で取材を受けることも多く、発刊3か月前の2007年の
12月には、NHK総合テレビの『未来観測 つながるテレビ@ヒューマン』と
いう全国ネットの番組でも、当社の3S活動を採り上げていただいています。
  経営計画に掲げた自著の出版
 実は、2002年度の経営計画の中で、私は自分自身の目標として「5年後
に本を出す」ことを掲げています。
 金型製造を主業務とする当社は、バブル崩壊後の一九九七年、創業以来初
の赤字となり、社内の士気も著しく低下していました。なんとかしようと3S活動を
中心に据えた経営革新に取り組んだ結果、生産性は大きく向上し、派生してデ
ジタル文書管理システム「デジタルドルフィンズ」事業も生まれ、以前よりもはる
かに利益の出る体質になりました。社員と一緒になって「人として正しいことを追
求する」「あるべき経営を追求する」社風を醸成できたからだと思いますが、そう
した私どもの思いや情熱、挑戦の日々の記録を、本という形で残したいという強
い思いがあったのです。

 とはいえ、当時、考えていたのは自費出版で、まさか書店に出回るなどとは、
全然考えていませんでした。しかも多くの方々が手に取ってくださり、これも想
定していなかったことですが、その年の秋には増刷がかかりました。

 当社の工場は、2001年の暮れ、松下電器産業(現パナソニック)の社員の
方が見学にいらしたことで話題になり、多くの方が見学に来られるようになって
います。いまでは定期的に見学会を開催していて、これまで累計1500社、4
500名以上の方がいらっしゃいました。
 本を出すまでは、見学者は何らかの形でご縁のあった方が大半でしたが、本
書を読まれた方からお申し込みをいただくケースが多くなっています。

 講演のご依頼も増えています。昨年10月、岐阜県中小企業家同友会のフォー
ラムでお話をさせていただいたときは、6つの分科会があり、それぞれ錚々たる
経営者の方が講演をされたわけですが、一番小さな会社の社長である私が、本
書のタイトルのままの内容で基調講演をさせていただきました。
 このように注目していただけるのは、ビジネス書の老舗といえる出版社さんから
単行本を発刊することができたからでしょう。すでに述べたように、ブログ等で
日々、情報を発信し、そのことで出会った方々とのご縁を大切にしてきた結果
が、本の出版という形を取って現われたようにも思います。

 以下、私がどのように情報発信してきたのか、それが一冊の本になるまでの経
緯を、もう少し詳しくお話ししていきます。情報発信に躊躇しておられる経営者
の方が、新たな一歩を踏み出すきっかけにしていただければ幸いです。

   すべてはブログから始まった
 まずブログを始めることになった経緯からお話ししましょう。
 2005年の春、中野瑛彦先生のブログセミナーに参加したときのことです。
蒲郡製作所の伊藤智啓社長さんとご一緒させていただいたのですが、すでに
ブログを始めておられた伊藤さんの記事が、サンプルとしてプロジェクターで映し
出されていて大変驚きました。
 当日、セミナーに先立ち、当社に足を運ばれた際の模様を「大阪のH社さん
で文書管理システムを見学」と題してすでにアップされていて、その記事が映っ
ていたからです。それまでホームページの更新などは自分でしていましたが、こ
んなに簡単に、すばやく更新できるということを目の当たりにして、大きな衝撃
を受け、同時に感動しました。それがブログを始めたきっかけでした。
 二つ目のブログとして書き始めた「経営者会報ブログ」との出会いについても
触れておかなくてはいけません。

 2006年の2月、日本実業出版社さんの主催するブログセミナーが大阪商工会
議所で開かれました。そこで、すでに社ブロガーとして名を馳せていた、同じく
旧知の敬愛する三元ラセン管工業の髙嶋博社長さんが講演されるというので、
私は応援させていただくつもりで駆けつけました。
 いま経営者会報ブログでご一緒させていただいている久米繊維工業の久米信
行社長さんの基調講演があり、当時からお世話になっていた「e 製造業の会」の
村上肇さんもおられて、会場は熱気に満ちていました。その熱気に背中を押され
たことと、経営者に特化されたブログサービスであることに大いにメリットを感じて
入会し、以来、仕事のある日は特別な事情がない限り、毎日、書いてきました。

 基本的なスタンスとして、マイナスの情報や他人の悪口は絶対に書きません。
読む人の気分が明るくなる前向きな情報、あるいは当社が「利他」の精神で歩
んできたということを具体的なエピソードを交えて書く。それが、私なりに考え
た「編集方針」でした。
 そして、経営者会報ブログで書き始めて一年を経た2007年の夏、日本実業
出版社の編集担当のKさんから「3S活動への取り組みを中心に、御社が〝行列
のできる〟町工場になっていくまでをまとめて欲しい」と執筆のご依頼をいただ
きます。思わず耳を疑いました。「本当に私でよいのですか?」と何度もお尋ね
したくらいです。
 実は、その一か月前、別の出版社から同様の趣旨で依頼がありました。
ただし、こちらは自費出版。
費用は一万部で1000万円もかかるというので、丁重にお断りしました。
日本実業出版社さんからのご依頼は純然たる商業出版でしたので、思わず聞き
返してしまったというわけです。
 ブログを書き続けていたとはいえ、ブログの記事は、そのままではビジネス書の
原稿にはなり得ません。改めてまとめる作業は楽ではありませんでした。
 私としては、3S活動について訴えたいことはそれこそ山ほどあって、どうしても
記述が細かくなりますし、専門的になります。それをKさんはうまくリードしてくださり、
おかげで3Sを知らない人、直接製造業にかかわったことのない人にも参考度の
高い本になったのではないかと思います。私の訴えたいことと、市場性を考える出
版社側のプロとしてのスタンスとが、うまく融合したといえるのかもしれません。

 タイトルについても紆余曲折がありました。「ゴミ」という言葉をタイトルに使うこと
に、私としては、かなり抵抗がありました。結果として、あえて3Sという言葉を使わ
ず、「ゴミゼロ化」とうキーワードを打ち出したことで読者層に広がりが出ました。
やはり、餅は餅屋だなと感心した次第です。
 感心といえば、装丁に関しては、案を見せていただいた瞬間、これ以上のもの
はない、と思いました。「町工場」と聞いて多くの人が浮かべるイメージの逆を
いっていて斬新ですし、何より、私が感じてきた、整理・整頓・清掃に取り組ん
で一段落したときの爽快感がよく現われていると思ったからです。

 もう一つ、感心したのは、冒頭部分に漫画をもってこられたセンスです。
10年ほど前、3S活動が一区切りした際、今後も力を入れていくと宣言した私に、
「3Sをやる時間があるなら本業に専念すべきだ」と一部の社員が〝叛旗〟を翻
したことがありました。そのエピソードを8ページの漫画にしてあるのですが、
どの企業にもある、新たな取り組みを進める際の軋轢、人の問題をわかりやすい
形でお見せすることで、書店でぱっと本書を開いた読者の方の共感を呼んだ部分
もかなりあったと思います。

 ただ、本書に関して関係者・読者から一つだけクレームが生じたのがこの部分
です。副社長に就いている弟から苦笑まじりに「俺の髪は10年前はこんなに薄
くなかったよ」と、文句を言われてしまいました。作画の方に現在の写真を渡し
て絵にしていただいたからで、ちょっと申し訳なかったなと思っています。

   想像以上の反響が…
 実際に本が出るまでは、社員の皆も半信半疑で、「本当に出るの?」という空
気はありました。私自身、この目で書店さんに並んでいるのを確かめるまでは、
同じような気持ちでいたのも事実です。もちろん社員には全員に配布しまして、
皆、喜んでくれました。店頭に平積みで置かれているのを見た瞬間は、言葉では
表現できないほどの感動がありました。
 いまも大阪市内の紀伊国屋書店梅田本店では、ビジネス書のコーナーで平積
みで置いてくださっています。
 ありがたいことです。
 参加しているe 製造業の会では出版記念の工場見学会とパーティーを開いてく
ださり、記念の盾まで頂戴しました。3S活動における私の師匠である、経営コ
ンサルタントの大山繁喜先生は、ご自身で何十冊も購入され、講演などで配って
くださっています。増刷になったのはこうした有縁の方々の無償の「営業活動」
のおかげでもあります。
 反響という点では、冒頭で述べたように、ご縁のなかった方から、見学会のお
申し込みをいただくことが増えました。少し前には、韓国のサムスン電子の取締
役の方が本書で当社を知り、韓国から17名も社員の方を引き連れて見学にいら
したこともあります。
 全国の多くの経営者の方から「感銘を受けました」「勇気を出して経営革新に
取り組むことに決めました」といった、お礼のお手紙やメールを頂戴することも
多く、私にとっても社員にとっても本当に励みになっています。このように、一
冊の本を出せたことで、新たなご縁が広がりつつあります。
 世の中には立派な経営者がたくさんおられます。そうした方々の経験や事業へ
の情熱を知りたがっている人は多いと思います。経営者自らが情報発信すれば、
自社の事業の発展に寄与するばかりか、トップの思いまで含めた取り組みが多く
の経営者の知るところとなり、問題解決に役立つでしょうし、勇気が湧く人もい
るはずです。社会的にも非常に価値あることです。ご縁も広がります。

 情報発信に努めるとしたら、現時点ではブログほど適したツールはないでしょ
う。いつか本を出そうとお考えの場合もブログで発信するのが近道だと思いま
す。自ら情報を発信することで出会いとご縁が生まれます。そのご縁を大切にす
るーー社業にとっても社長の人格形成のうえでも重要な姿勢ですし、出版の機会
はあくまでも、その過程で巡ってくるものなのだと思います。


「日本実業出版社・経営者会報2009年3月号より」

古芝保治@枚岡合金工具株式会社

■ 文書管理【デジタルドルフィンズ】

■ 【デジタルドルフィンズ】 営業ブログ

■ 【枚岡合金工具】 金型事業部HP

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IT経営百選 最優秀賞  中小企業IT経営力大賞 中小企業IT経営力大賞・審査委員会奨励賞

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1949年3月 大阪市生まれ。桃山学院高校卒業後、30年間自社の金型設計・製造に携わるかたわら1983年より自社の販売・受発注管理システム独自に開発2001年よりISO9001工程認証システム等統合管理ソフトを開発。現在、金型の他、現場のアイディアを生かした「デジタルドルフィンズ」事業を立ち上げ...

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